
週間東亜2001.07
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■北朝鮮商船交信文、国防委流出の攻防
北朝鮮商船清津2号と海軍の交信文が漏出し、「南北密約説(裏面合意説)」に飛び火し、与野の政争が先鋭化している。
海軍が6月2日、済州海峡に侵入した清津2号を通信検索する過程で送受したこの交信文は、「軍事3級秘密」に分類されていた。この秘密文件は、領海侵犯事件の調査のため、国会国防委所属のハンナラ党朴セファン議員が資料として要求し、合参が提出した。
当初、秘密文件を持って来た合参のチュ某中領は、朴議員と1対1で面談し、資料を提出しようとした。
しかし、チュ中領が朴議員の事務室に来た当時、朴議員は、席にいなかった。この時、朴議員の補佐官であるオ某氏が現れ、「秘密取扱認可証を持っている」とし、文件を譲り受けて複写しようとした。
チュ中領がこれを制止すると、呉補佐官は、「私が責任を取る。複写したのではなく、メモしたことにしろ」とし、計25ページに達する秘密文件の相当部分を複写した。呉補佐官が秘密取扱認可証を持っているのか、持っているとすれば、何級まで取り扱える認可証を持っているのかに対しては、未だ明らかにされていない。
呉補佐官が複写した文件は、直ちに言論に流出し、ハンナラ党の政府攻撃用の災いとなった。流出した交信文中、問題部分は、「昨年6.15北南協商交換時にも、済州島北端を航海することは、自由に可能だということに決定されたことを良く知っています」ということである。
清津2号の主張は、事実である場合、昨年、南北頂上会談において、済州海峡無害通航権が合意された可能性があるというニュアンスを漂わせる。
国軍機務司令部は、秘密流出と関連して、合参のチュ中領と呉補佐官を照査することに決定した。機務司は、6月20日、呉補佐官に出頭要求書を公式発送し、26日まで機務司に出頭することを要求した。
これに対して、呉補佐官は、「出頭の可否は、党指導部に一任した位、党の意思に従う」とし、一旦、拒否の意思を明らかにした。
機務司の方針に対して、与野間の論戦は、南北密約説と別個の「軍事秘密適合性」論争に外れている。交信文自体が秘密ではないというハンナラ党の主張は、大きく2つにパターンを置いている。
先ず、軍当局が既に交信文を部分的に言論に公開し、第2に、全ての内容を北朝鮮が知っていることである。交信文が秘密に分類されていたというが、内容的に秘密性を備えていないというのが、ハンナラ党の主張である。
これに反して、機務司側は、特定事案を秘密に分類して管理するゲート・キーピング(Gate-keeping)機能は、軍事機密保護法に従い、軍当局のものだと反駁している。交信文が形式的に軍当局により、軍事3級秘密に分類されている位、政治権は、尊重しなければならないという話である。
内容性に対しても、機務司側は、「視角に従い、秘密を有し得る」とし、ハンナラ党と意見を異なっている。通信検索する方法と阻止に出た海軍艦艇の位置等は、第3者に海軍の対応措置を把握させる情報を提供するというのである。
機務司が今回の事件と関連して、民間人である呉補佐官を調査することは、法的な瑕疵がない。民間人も、軍事問題と関連していれば、軍検察が出席要求書を発布することができる。
機務司側は、呉補佐官を強圧的に連行する考えは、まだしていないでいる。「忍耐力を持って、手続に従い出頭を要求するもので、呉補佐官も、これに応じてくれることを期待する」というのが機務司側の発言である。
■軍事秘密量産、適当なのは全て秘密
専門家は、今回の事件が軍事秘密のみならず、軍事機密に対する政治権の態度を見せ付ける重要な端緒を提供したと評価した。
先ず、軍事秘密が度を過ぎて量産されているという指摘である。現実上、秘密と見られないことも、秘密に分類されており、秘密と周知の事実を混同しているのである。適当ならば、保安規定を考えずに、秘密に分類してしまう行政便宜主義が大きな原因である。
今回の事態でも、一部交信内容を公開していた軍が公開しなかったことが公開され、波長が広がるや、捜査に入った。厳密に言えば、交信内容を部分的に公開していた国防部関係者も、捜査対象であるはずである。
これに加えて、既存の秘密を状況に従い、再分類する作業がありのままに行われていないことも問題である。軍発注契約の場合、軍が秘密に分類した契約書を民間業者は、事業上、公開裏に使用するが、ひどい場合、新聞のスクラップまで秘密に分類される寸劇が行われているのは、このためである。
軍事秘密に対する政治権の態度にも、問題が多いものと指摘される。交信文流出事件の場合、形式的に秘密要件を備えている文件が、この与野政争の渦中に犠牲(公開)となったのである。
軍事秘密に接する資格が与えられる国防委所属議員は、権利と同時に、秘密を保護する義務も負う。たとえ、補佐官を通したとしても、軍事秘密が政治的目的に従い公開された事実は、問題とならない訳がないという批判である。
これとは別に、公職社会の保安不感症も取り上げられる。政府の国策事業資料を始めとして、対北経験と関連した国家安保会議(NSC)会議資料が頻繁に流出しているという話である。
情報関係者は、このような機密流出の原因として、大きく3つを挙げている。
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第1に、政権後半期、政治権に取り入るために、故意に流出する事例である。 | |
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第2に、公務員の保安意識がないか、弱まっているためである。 | |
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3番目は、防衛力増強事業等、該当部署の公務員が金を受けて、流出することである。 |
秘密と国民の知る権利は、相克関係にあるといっても過言ではない。それにも拘らず、両者は、国益を中心に適正な妥協線を探して、調和させなければならない関係にある。北朝鮮商船の交信文流出事件は、このような点において、秘密と知る権利の関係を再定立する契機とならなければならないという声が高い。
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軍事秘密、秘密が秘密の対応を受けない。
■1、2、3級3種類・・・知られていることも秘密は秘密
国防部が最近ハンナラ党朴スングク議員に提出した資料によれば、昨年12月現在、軍事秘密は、56万1,924件である。この内、1級秘密は8件で、2級秘密が29万1,011件、3級秘密は34万2,905件だった。ここに対外秘を含めれば、秘密文書は、計110万余件に達し、重量が95tに及ぶ。
秘密は、3種類に分類される。1級秘密(Top
Secret)と2級秘密(Secret)、3級秘密(Confidential)がそれである。1秘密の上の「特級秘密」はない。漏出した場合、賦課される処罰も、当然、1級秘密が最も重い。
北朝鮮の秘密は、「極秘」と「秘」の2種類に区分されている。
秘密の種類と分類、取扱方法等は、法により規定されている。上位法である国家情報院法第3条に依拠して、大統領令により「保安業務規定」を置いており、ここに根拠を置いて、更に「保安業務規定施行規則」が作られている。
1、2、3級秘密等、分類指針とその例は、保安業務規定施行規則に明示されている。各級政府機関は、この施行規則に根拠を置いて自主的な「保安業務内規」を作成し、秘密を管理する。保安業務内規作成時、各機関は、国情院の援助を受ける。
■1級秘密取扱認可者、極めて制限
1級秘密は、「漏出した場合、大韓民国と外交関係が断絶して、戦争を誘発し、国家の防衛計画、情報活動及び国家防衛上必要不可欠な科学と技術の開発に莫大な支障を招来する憂慮がある秘密」と規定されている。
代表的な1級秘密は、外交上の秘密協約である。2級秘密は、「漏出した場合、国家安全保障に莫大な支障を招来する憂慮がある秘密」を言う。3級秘密は、「漏出した場合、国家安全保障に損害を及ぼす憂慮がある秘密」である。対外秘は、「業務上、機密を要するもの」と秘密に準じて管理される。
1級秘密は、漏出した場合、招来される害悪が非常に大きい位、秘密取扱を認可することができる資格者が極めて制限されている。
現在、法規上、1級秘密取扱認可権者は、大統領を始めとする行政府高位公職者と高位軍指揮官等である。行政府の取扱認可権者は、各部処長官と国家情報院長、大統領秘書室長と警護室長、大統領直属機関の長、検察総長等である。
軍の取扱認可権者は、合参議長、各軍参謀総長、1、2、3軍司令官、国防長官が指名する各軍部隊長等である。
1級秘密は、これら取扱認可権者の認可を受ければ、極端には、二等兵も取り扱うことができるが、認可がなければ、将官でもやたらに見ることができない。
1級秘密認可権者は、2級、3級秘密に対する取扱も認可することができる。2〜3級秘密は、この外に、特別市長、広域市長、道知事、各級教育監も、取扱を認可することができる。
特定事案を秘密に分類することの可否は、原則的に秘密を生産する部署において、自主基準(保安業務内規)に従い決定する。秘密と機密は、厳密な意味において区別される。秘密が狭義の概念ならば、機密は、広義の概念である。
機密は、一般に知られていない事実の内に、保安を要するものである。これに比し、秘密は、機密中において特別に保護する必要があるとき、保安業務規定により秘密に分類・管理されるものである。
全ての機密と秘密に関する業務は、原則的に国情院が企画・調整する。しかし、この内、軍事機密と秘密に関する事項は、1980年から国防部に委任している。
ただ、行政部署の性格を備えている国防部(本部)の保安業務は、国情院が担当している。結局、非軍事秘密(民間の秘密)は国情院、軍事秘密は国軍機務司令部が管掌する2元的形態を取っているのである。
秘密の寿命は、永遠なこともあり、一時的なこともある。一時的秘密は、秘密表示欄に予告文を付与し、破棄するか、一般文書として分類される時点を定めてもいる。
しかし、例えば、「30年後公開」等のように、秘密を解除する一般的条項があるわけではない。秘密は、原本があって、写本がある。写本は、秘密が解除されれば、一般文書として転換するか、破棄することができるが、原本は、破棄することができない。1999年に発効した「公共記録物管理に関する法律」は、秘密文件原本の破棄を禁じている。
■非専門家が秘密取扱、秘密価値評価切り下げ
秘密時限を規定した予告文がなくても、秘密は、解除することができる。秘密解除は、大きく2つの方法がある。
先ず、秘密を生産した機関の長が、これ以上秘密としての価値がないと判断する場合、職権で一般文書に分類する方法である。この場合、該当機関の長は、この秘密を共有している他の機関に秘密解除の事実を通報しなければならない。
2つ目は、他の機関の長が秘密生産機関に解除を建議する方法がある。万一、秘密生産機関が組織統廃合等によりなくなった場合には、国情院に可否を問い合わせることができる。
このような手続にも拘らず、相当数の秘密は、各機関の長や、該当部署の怠慢等により、解除過程を明らかにせず、「秘密ではない秘密」として残っている事例が数多い。
各部処において、保安業務の非専門家が秘密を取り扱っていることも、価値のない秘密を温存させる原因に数えられる。秘密が量産されても、適切な時期に解除されないことによって、秘密の価値が評価切り下げされている。
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■軍事秘密、秘密はいかに管理されるのか。
秘密に分類された文件は、前表紙と裏表紙上下端に各々2個ずつ、計4個の赤色の秘密表示の印章が押される。同じ内容物に別の等級の秘密が同時に含まれていれば、前後の表示に押される印章は、高い等級に従う。1級と2級秘密が同じ文件に含まれていれば、表示には、1級表示を行うのである。
秘密表示の印章は、1級秘密の場合、四方の上の部分にハングルで「軍事1級秘密」、下の部分に英文で「Top Secret」と表示されている。
対外秘は、四方の上の部分にハングルで「対外秘」が表示されており、下の部分には、例えば、「2001年10月1日まで」等の解除予告文が書かれている。秘密も文書の全ての裏面の空白部分に解除予告文を付与する場合がある。
秘密表示の印章は、前後の表示のみならず、文件の全ページにも上・下段に2個ずつ押される。
軍部隊は、秘密の種類に従い、保管用キャビネットを異にする。1級秘密は、特別対応を受ける。1級秘密は、収発する時、二重の封筒に入れ、当事者間に直接受け渡さなければならない。
1級秘密は又、通信で受け渡すことができない。1級秘密は、必ず別途のキャビネットに保管され、2級と3級は、同じキャビネットに保管することができる。キャビネット内の全ての秘密には、一連番号が付けられる。中央部隊ではない隷下部隊では、通常、2級、3級秘密だけを取り扱う。
国防部の秘密は、国防部保安業務内規に根拠を置く秘密細部分類指針に従い分類される。国防部の全ての秘密業務は、機務司の統制を受ける。機務司は、軍機密と秘密の保安事故を防ぐため、保安監査と保安調査、保安測定等を実施する。
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最終更新日:2004/03/19